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「ツァラトストラかく語りき」上巻の読後感
「ツァラトストラかく語りき」(ニーチェ著 竹山道雄訳 新潮社)上巻を読み終えました。道徳や宗教、学識等の既成の概念を次々壊していくツァラトストラは、ニーチェの哲学観そのものですが、ツァラトストラの語り口には文芸的要素もあって、その鋭い舌鋒にニーチェらしい詩情や雰囲気がよく表れています。上巻を読み進めていくうちに、こうした語り口に慣れてきましたが、理解の出来ない箇所も多く、懇切丁寧な解説に頼るしかありません。上巻はニーチェ晩年の思想である永劫回帰が語られようとするところで終わりました。「指針は進んだ。わが生命の時計は息を衝いた。いまだ曾てわれは、わが周囲にかかる静寂を聞いたことがなかった。この故に、わが心臓は畏怖した。この時に、ある声が声なくしてわれに語った。『ツァラトストラよ、なんじは知っているのではないか。』この囁きを聞いて、われは恐れのあまり叫んだ。わが顔からは血が退いた。~略~『おお、ツァラトストラよ、なんじ、やがて来るべき者の影として行け。されば、なんじ命令せよ、命令しつつ先行せよ。』われ之に答えて言った。『われは恥ずる。』」という文面からは、何かを悟ったツァラトストラの躊躇う様子が描かれています。解説によれば「ツァラトストラは永劫回帰の思想を予感しながら、未だなお之を充分展開しえないでいる。彼は自己の教養の知的基礎づけの可能に対して疑いをもっている。そして嘲笑をおそれている。」とあります。ここで上巻が終わり、下巻へとツァラトストラの独白が引き継がれていきます。もう暫しツァラトストラにつきあおうと思います。