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ノーベル文学賞雑感
今年のノーベル文学賞に米歌手のボブ・ディランが受賞したと聞いて驚きました。職場にある新聞がどれも一面を割いて、このニュースを伝えていました。ボブ・ディランはシンガソングライターで、とくに自ら作詞したものに文学性が認められたわけですが、本流を歩む文学者にはやはり反発があったようです。ボブ・ディランには時代の寵児として反戦などの社会風刺を詞にしたり、また内面性を掘り下げた難解な詞を連ねた歌もあります。私は高校生の頃に、本家だったボブ・ディランの前に分家の日本人フォークシンガーによりボブ・ディランを知りました。現代詩に曲をつけた小室等や社会派フォークの旗手だった岡林信康を筆頭に、その後に続く吉田拓郎や井上陽水を当時頻繁に聴いていて、詞はメロディーを飾るモノくらいにしか考えていなかったあの頃の歌謡曲とは違う表現に痺れていました。やっと社会に目を向けた高校生の耳に畳みかけるように訴えかけてくるコトバに戦慄さえ覚えました。その本家本元にはすぐに馴染むことができました。まず聴衆に訴えたいことや考えて欲しいこと、行動して欲しいことがあって、それを叫んでいるうちメロディーに乗せるようになった、そんな歌作りがボブ・ディランから見えてきます。「歌詞には象徴的表現が多く、多様に解釈できる。本人は『言葉は違う意味を持ち、また意味を変える。10年後には別の意味になる』と明かしている。」「♪何回弾丸の雨がふったなら武器は永遠に禁止されるのか?~略~こたえは風に舞っている♪」(読売新聞より抜粋)現在も中東では空爆があり、日本の近隣では核開発や海での挑発行動が絶えません。50年前に作られた詞に今も共感を覚えるのは、世界が少しも変わっていない証拠かもしれません。