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関西出張① 「奇想の系譜」読み始める
今日から関西方面へ2泊3日で出張します。行きの新幹線に中で読む書籍をどれにしようか思案していました。普段鞄に携帯しているのは「聖別の芸術」(柴辻政彦・米澤有恒著 淡交社)です。私には大変面白い評論で、時間をかけてとつおいつ読んでいるのですが、出張には軽量な文庫本がいいと思っていたので、別の書籍を探していました。自分が読もうと思って既に購入してあった文庫本の中から、今回は「奇想の系譜」(辻 惟雄著 筑摩書房)を読み始めました。本書の初版は1970年というから今を遡ること47年前になります。著者がまだ30歳代の気鋭の著作だったわけです。確かに日本美術史の中で埋もれていた傍流とも異端とも言われる画家の中に、現代に通じる斬新さを発見した本書は「眼から鱗」的な発想だったと思います。本書の中に「そして『奇想』とは『エキセントリックの度合の多少にかかわらず、因襲の殻を打ち破る、自由で斬新な発想』であることに思い至る。これは貴重な発見だった。このように考える時、雪村、永徳、宗達、光琳、白隠、大雅、玉堂、米山人、写楽といった、近世絵画の動向に大きな影響を与えた画家たちがいずれもこの系譜に含まれてくることに気づいた。」(服部幸雄解説)という一文があります。そうなれば「奇想」はまさに日本美術史の主流にもなり得るわけで、展覧会があれば私たちが大挙して訪れる伊藤若冲や歌川国芳も当時は埋没していた画家だったと言えるのです。毒々しさや卑俗さが古典的な気取りの殻を打ち破り、生き生きとした活力を伝えている「奇想」の画家たちは、本書のお陰で現代を生きる私たちの心を刺激する存在になっています。その着眼点を知ることは次世代へ繋がる橋渡しにもなろうかと思います。新幹線に揺られる僅かな時間に「奇想の系譜」に思いを馳せることは贅沢な時間とも思えます。