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「池田宗弘展」における芸術と信仰
昨日、長野県麻績に住む彫刻家池田宗弘先生から、「池田宗弘展」の新聞批評の切り抜きが送られてきました。電話でも芸術と信仰について池田先生と長々と会話したことがあります。池田先生は私の大学時代の師匠で、人体塑造の基礎を教えていただきました。その頃はまさか先生と芸術や信仰について議論するとは思いもよらないことでした。「池田宗弘展」は長野県の朝日美術館で開催されていましたが、先月は私が自分の個展準備で多忙を極めていて、展覧会に行けずじまいで先生には失礼なことをしてしまいました。東京銀座のギャラリーせいほうの田中さんも展覧会には行けなかったと仰っていました。新聞記事によると今回の展覧会は、信仰をテーマにした先生の彫刻の集大成のような展覧会だったようで、時期がずれていれば必ず行っていたのにと思った次第です。池田先生は従来のキリスト教のテーマに加え、川崎大師に観音像のレリーフを制作されたようで、今では宗教を超えた信仰そのものをテーマにしています。信仰とは何か、実のところ私には難しい課題です。私は信仰の何たるかを知りません。そのため宗教の知識はあっても本当の信仰には至らないのです。人間はどこかで何かに縋りたい心を持っています。自己と向き合うと、耐えられぬほどの自分の脆弱さに気づき、それを補うために特定宗教の虜になったりするのではないでしょうか。芸術は私にとって精神安定剤のひとつですが、自己表現が自己都合ではなく、社会的な発言が可能になった環境を得た時に、己の考える芸術と信仰についての思索と実践が実を結ぶのではないかと、先生の意見を聞いて思うようになりました。私は自分の人生が急展開をしない限り、信仰をテーマにした作品は作れないだろうと思っています。一般的な信仰心を持っていても、それが今のところ自分の中心課題にならないからで、展覧会を通して先生から投げかけられたテーマを基に、自分の芸術にとっての主たる内容は何だろうかを考える契機にしたいのです。