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「イサム・ノグチ 庭の芸術への旅」読後感
「イサム・ノグチ 庭の芸術への旅」(新見隆著 武蔵野美術大学出版局)を読み終えました。イサム・ノグチはNOTE(ブログ)に度々登場する私の大好きな巨匠です。本書で取り上げられている香川県牟礼にあるイサム・ノグチ庭園美術館全体を俯瞰した記述や、東京青山の草月会館にある石舞台のような空間作品「天国」の考察は、何となく私が感じていることに確かな輪郭を与えてくれました。北海道のモエレ沼公園や米ニューヨークのノグチ財団の美術館に私はまだ行ったことがなく、想像で補うしかありませんが、それでもノグチ・ワールドの雰囲気は伝わってきました。ノグチの分野横断的な仕事を本書では次のように述べています。「抜群に造形力のある天才だから、さまざまなジャンルに、あれだけ跳梁跋扈した。何でもかでも、ノグチ流にねじ伏せてしまう。自家薬籠中ものに、さらりとしてしまう。苦労の手垢さえ、見せない。その人が、さらに手に入れたかたちにこだわらず、次に進むのに、拘泥せずに捨てようとするのだから、またすごい。行為を自然に投げ返す作業はつねにノグチの胸中にあった、礎だった。晩年の石彫を、『時間』の造形であると解釈する人は多いし、それに賛同する者でもあるのだが、自然とのキャッチボールという感触が私には強い。もっと簡単に、ノグチは、ひとつところにとどまること、流れや動きの停滞を、徹底的に嫌った。生涯においても、ものづくりにおいても。風こそが、ノグチの生涯と作品の、豊かな謎を解く鍵だ。そう、近頃とみに感じられる。」イサム・ノグチの作品は何とも言えない色艶があり、風のような爽やかさを感じさせ、しかも孤独です。そんな私が予てから持っていた印象に、本書は豊かな裏づけをしてくれました。