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note

「点」について
「見えないものを見る カンディンスキー論」(ミシェル・アンリ著 青木研二訳 法政大学出版局)を昨日に続いて取り上げます。画家カンディンスキーは抽象絵画の創始者であるとともに、当時バウハウスで講義した抽象芸術の理論が有名で、近代美術史の中では実践と理論双方で大きな業績を残した巨匠と呼ばれています。私もカンディンスキーの著作である「芸術における精神的なもの」や「点・線・面」の邦訳を読み耽った時期がありました。嘗てこのNOTE(ブログ)でもカンディンスキーの著作を取り上げたことが記憶にあります。今回は著者ミシェル・アンリによる「点」の解釈を載せます。「点」を定義した本文を引用いたします。「バウハウス時代、探究が集中的に向けられて行くフォルムの最初のものは、点である。~略~まぎれもなく、点は幾何学的存在でもある。幾何学的存在としての点は分割することができず抽象的であるが、これは、純粋状態で(もはや自然のフォルムとしてではなく)把握され考えられた幾何学図形一切を表す場合の、非具体的で観念的な存在という意味においてである。」現実に点を作品表面に穿った場合はどうなのか、こんな一文もありました。「現実の点は、いくぶんか小さかったりいくぶんか大きかったりする。したがって、点が大きくなればなるほど、それが占める表面がまさしくひとつの面になり、そういうものとしてその固有の音色とともに知覚され体験される。~略~点が少しずつ面に変わったり、あるいは逆に面が再び点として把握されたりする間、二つの内部の音響、二つの情動的な基調色、点と面の基調色は重なりあっているけれども、ただひとつの外部の要素、現実の点という要素のほうは眼ざしをとらえ続けて離さないのである。」