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「フォルムと色」について
先月末にフッサールが提唱した現象学における現代的な解釈を論じた日本人著者による書籍を読み終えたばかりですが、もう一冊フランスの現象学者が著したカンディンスキー論を同時に読んでいて、こちらの方はまだ読破しておらず、ここでひとつの単元である「フォルムと色」のまとめを行います。現在、とつおいつ読んでいるのは「見えないものを見る カンディンスキー論」(ミシェル・アンリ著 青木研二訳 法政大学出版局)で、改めて私自身でカンディンスキーを通して抽象絵画の見直しを図っているのです。単元の冒頭で「外面的には、色とフォルムは互いに無関係であるように見える。」という問いかけがあり、それに対する答えとしての論理が展開していきます。「もし形象表現的なフォルムと色とが要素であるとすれば、両者が外部の様相においてどんな相違を示そうとも、両者は共通の本質を、おのれの基調色をもつ。基調色は等質であり、それはデカルト的な意味で、主観的な生の、心の形態である。」これは何を意味しているのか、カンディンスキーが述べている「芸術は、感性に働きかけるものであるがゆえに、それは、また、感性を通してしか、働きかけることができないのだ。」という言葉に示されているように、感性の前ではあらゆるものが要素として、外部や内部の様相を伴って存在していることになります。そうした視点で芸術を見ていくと、フォルムや色は究極的に一つの基調色であると言えるのです。さらにそれらの統一性に関する文章もあり、まとめとして引用させていただきます。「この世界の情動的な統一性に関するこうした重要な規範は、そうすると多様性の統一性への単純化につながることになるのだが、後者のために前者を消去するという意味では少しもなく、逆に両者を持続させ共存させるという意味なのである。こうした持続は存在しているのだが、実際には単純化として現われている。つまり、多様性があり得るのは、それの根底にあってそれをまとめあげている統一性の中だけ、統一性にによってだけである。」