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「ある日の彫刻家」を読み始める
「ある日の彫刻家」(酒井忠康著 未知谷刊)を読み始めました。本書は副題に「それぞれの時」とあって、美術評論家酒井忠康氏がそれぞれの時代や場面で関わられた造形作家に対し、その思いを綴られた随筆集になっています。現代の日本を代表する具象彫刻家佐藤忠良、既に故人になってしまった巨匠のインタビューは、この稀有な彫刻家の性格や人生を浮き彫りにする極めて興味深いものでした。私は20代の頃、学校で人体塑造を学んでいた時には、佐藤忠良、船越保武、柳原義達という3人の巨匠がまだ存命で、日本人が作り出す具象彫刻の在り方はこういうものかと思っていました。ただ、自分は具象表現になかなか自己を見い出せず、塑造による空間デッサンが上手になっても、人体に自己表現を突き詰められない力不足を感じていました。本書の中には、そんな自分が塑造を作る一方で、当時その独特な造形世界を構築していた保田春彦、若林奮先生たちに関わる随筆が載せられていて、興味関心が尽きません。本書は彫刻以外の分野で活躍する方々の仕事を紹介していて、これにも興味を感じるところです。現代彫刻は私にとって生涯を賭けるほど刺激的な分野になってしまっています。日本美術史の中では特異な光を放つ分野かなぁと自分勝手に思っていますが、どうでしょうか。通勤の友として本書を楽しみながら読んでいきたいと思います。