Yutaka Aihara.com相原裕ウェブギャラリー

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5月RECORDは「萌芽の眺め」
日々1点ずつ制作しているRECORDは、その季節に左右されることが多く、工房の窓からの風景を見ていると、青葉若葉が繁り、芳醇な緑に覆われて美しくなった雑木林に、心が安らいでいくのを感じます。5月のRECORDのテーマを「萌芽の眺め」にしたのはそんな理由からですが、RECORDは写実的な表現をある程度制限していて、風景を象徴化することを念頭において制作しています。所謂イメージトレーニングを自分に課しているわけですが、自分の内面だけでトレーニングをやっていると、表現内容に限界がやってきます。自然をよく観察するというのは、美術界でよく言われることですが、本当に自然から得るものに毎回新しさ、新鮮さを感じています。自然は多様性をもっていて、私の内面の貧困さを補ってくれるのです。樹木の一部を取り入れて、それを自分の中で形態と色彩の取捨選択を行うのは、オランダの画家モンドリアンと同じ方法を経るのですが、表面に現れる世界観はアーティストによって全て異なってきます。その異彩が面白いために、多くの作家が創作活動をする理由になっていると私は思っています。私が10年以上も前から制作しているRECORDは、一日1点ずつ毎日作り上げていて、じっくりイメージが醸成するまで待てない嫌いがありますが、それでも集中してイメージを搾り出すことで、達成感は得られます。過去に似たような表現があったかもしれないと思いつつ、今日も工房の窓から見える鬱蒼とした木々を印象に留め、その象徴化を図っているのです。ただし、二足の草鞋生活から解放されたことで、多少RECORD制作にも余裕が生まれるかなぁと思っていたのですが、1ヶ月以上過ぎたにも関わらず、勤めていた頃と大きく変わっていません。RECORDは夜にならなければ始められない習慣が出来てしまっていて、工房から帰った夕方の時間帯にやろうと思っても、なかなか始められないのです。しかも小さい作品ながらRECORDはなかなかの仕事量で、これを校長職の合間にやっていたのが今では信じられないくらいです。毎晩睡魔と闘っていたのを今も覚えていますが、集中力の持ち方が明らかに違っていたように思えます。