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「さまざまな形態構造と装飾原理」について
「中空の彫刻」(廣田治子著 三元社)の「第二部 ゴーギャンの立体作品」の中の「第2章 最初の陶器(1886秋~1887初頭)」に入り、今回は「3 さまざまな形態構造と装飾原理」をまとめます。本章では4つの単元が出てきます。一つはジャポニスム、二つ目はペルーの古陶器の影響、三つ目は過去の西洋陶器への回帰、四つ目はグロテスク装飾様式です。まず、ジャポニスムからその定義をまとめます。「1.西洋の画家たちによる日本的モティーフの使用(ジャポネズリ)、2.画面構成の妙、絵画的手段の単純化など、造形革新における日本美術の影響、3.芸術と日常生活が結びつき、芸術と工芸、芸術家と職人を区別しない日本の社会的、文化的構造の影響である。」そうしたことによってゴーギャンは「絵画においては、日本のモティーフはときに潜在的に、象徴主義的な曖昧さの中に表され、炻器作品においては日本の芸術のように、素材の肌合いを生かし、焼成が及ぼす影響も表現の重要な要素とすることが意図されている。」とあり、他の印象派の画家同様にジャポニスムの影響下にあったと言えます。ペルーの古陶器の影響についてはどうでしょうか。「スペインによる征服以前のペルーの陶器は、実用性より宗教性、芸術性、彫刻性を重んじたのであり、ゴーギャンが『アメリカの土着の人々の陶器』に価値を認めた理由もここにあった。奇妙なさまざまな取っ手が注目されるゴーギャンの第一期の炻器においては、取っ手がしばしば器の全体的フォルムやその構造を規定しており、ペルーの古陶器の特異な首=取っ手、あるいは二つの壺を繋ぐ取っ手は、ゴーギャンに新しい形態を構想する上で重要なインスピレーションを与えていたことが知られるのである。」また、過去の西洋陶器への回帰にもゴーギャンは自分の作品に要素を取り入れていて、その真髄を掴もうと美術館や民族学博物館にも足を運んでいたようです。最後にグロテスク装飾様式ですが、次の文章を引用いたします。「ゴーギャンの作品の表面を飾っているのは、塑像や線刻によって表された人物や動物、植物や情景など、さまざまな異種のモティーフであった。このような器の表面に施された過剰なまでに豊かな装飾は、古代に端を発し、ルネサンス期に再興し、瞬く間に西洋世界を席巻した『グロテスク装飾様式』に通じるものを強く感じさせる。」また、こんな文章もありました。「ゴーギャンが行ったさまざまな異種の要素の寄せ集めによる表面装飾は、まさしくグロテスク装飾様式を支配するものと同じ原理に基づいているといえるのである。古代の壁面装飾からルネサンスへ、そしてルネサンスからフランス17、18世紀を通じてゴーギャンへと受け継がれた装飾様式に通底していたのは『幻想性』であった。」