Yutaka Aihara.com相原裕ウェブギャラリー

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「グロテスク」について
「中空の彫刻」(廣田治子著 三元社)の「第二部 ゴーギャンの立体作品」の中の「第3章 彫刻的陶器への発展と民衆的木彫の発見(1887末~1888末)」に入り、今回は「4 グロテスク」をまとめます。グロテスクとは何でしょうか。ネットによると、グロテスク (grotesque) とは、古代ローマを起源とする異様な人物や動植物等に曲線模様をあしらった美術様式のことで、その奇怪な表現に私は度々魅了されてきました。グロテスクという様式概念も西洋によるものですが、同じようなものは世界各地に見受けられます。ゴーギャンの彫刻を論じた本書では、幅広く世界的にグロテスクを扱うというものではなく、西洋のある時代に限って論考しているのは言うまでもありません。「ルネサンスのグロテスク装飾体系は、左右対称の唐草模様を基本とする古代の壁画装飾に、中世の怪物趣味と北方的滑稽を加味させながら発展してきたのであった。半=人間、半=動物、あるいは半=植物の混種的創造物の不可能な組み合わせ、そして渋面の強調は、グロテスク装飾を、興奮を引き起こす刺激的な装飾様式とした。」また、グロテスクの多義性にも触れた文章がありました。「近年のグロテスク美学の研究が一致して認めているように、グロテスクなるものには両面価値を構成する多義性がある。それは本質的に二重性をもち、滑稽であると同時に脅威でもあり、現実主義的であると同時に幻想的でもあり、現代的であると同時に神話的でもあり、神的であると同時に悪魔的でもあるのである。」ゴーギャンについてのこんな文章もありました。「興味深いことにゴーギャンは晩年、自らの中に潜む善悪の二元性を語りながら、持ち前の『懐疑的な』態度でカテドラルの壁龕の中にいる聖人とともにその屋根の上の樋嘴(ガルグイユ)を語り、この中世の怪物彫刻に対する関心を証している。『忘れがたい怪物たち、私の目はここに生み出された奇怪な怪物たちの体の表面の起伏を怯えずにに追う』。」本書ではゴーギャンと同時代に生きた画家ルドンにも言及していて、グロテスクと同様、怪物なるものも「実のところそれは『普段見慣れていない』ものを見ることのできる想像力をもつ芸術家のみが生み出しうるものなのであった。」