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「ピエロ・デッラ・フランチェスカ」を読み始める
イタリアの初期ルネサンスの宗教画家ピエロ・デッラ・フランチェスカは、その絵画性に現代にも通じるものがあると知ったのは、日本の書籍によるもので、私自身が20代で西欧に暮らしていた時には、とりわけ注目していなかった画家でした。また再びイタリアに行く機会があれば、是非見てみたい画家の一人になっていて、その時代環境等を本書を通じて学んでいきたいと思っています。「ピエロ・デッラ・フランチェスカ」(アンリ・フォション著 原章二訳 白水社)を今日から読み始めます。キリスト教に纏わる宗教絵画には何の予備知識もなく、20代の私は西欧に暮らしていました。私のいたオーストリアのみならず、ドイツ(当時は東西ドイツ)やイタリア、フランス、スペインに行くとどの街にも立派な教会があり、教会内部には宗教絵画がありました。中央にある祭壇画や周囲を飾っている壁画は、最初の頃はその壮麗さに驚きましたが、数多の宗教絵画に接しているうちに、次第に辟易してきて、私は西洋の感覚に引け目を感じるようになりました。自分の成育歴にキリスト教の造形文化がないことで、どうしても馴染めない要素があると私は自覚していきました。絵画や彫刻はそうした背景を持つ造形芸術であることは充分理解していましたが、私は西洋流の人体描写を拒んでしまう時期もやってきました。キリスト教の宗教絵画を勉強してみようと思ったのは、自分が帰国して、やや西洋が遠ざかった頃からで、昔の記憶を辿った結果であると思っています。自分の感覚の対岸にある圧巻の美術を紐解いてみようと考え、古い時代の宗教画家を調べていくうちにピエロ・デッラ・フランチェスカが現れてきたのです。その後に続くルネサンスで活躍した芸術家たちが始めた技法は、今も透視図法や陰影で立体を表す方法として現在の日本でも定着しています。その発端はピエロ・デッラ・フランチェスカの絵画性かもしれず、ここでじっくり本書を読んで、自分なりの理解に努めてみようと思っています。