Yutaka Aihara.com相原裕ウェブギャラリー

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作品集「四つの風」について
昨日、アイヌの木彫家「藤戸竹喜」展のことをNOTE(ブログ)に書いていたら、同じアイヌの木彫家砂澤ビッキのことを思い出しました。確か藤戸竹喜と砂澤ビッキが一緒に写っていた写真が展示されていたので、具象と抽象の世界こそ違えど、2人には相通じるものがあったのかもしれません。砂澤ビッキは神奈川県立近代美術館での個展で、私はその存在を知り、本人のことを調べてみたくなったのでした。作品集「四つの風」(北海道新聞社)は同美術館で手に入れ、書棚に仕舞いこんでいました。砂澤ビッキの作品を撮り続けて作品集にまとめたカメラマン夫妻がいて、彼らの文章が作家の生き様を物語っていました。「Ⅰ四つの風」の扉文から引用いたします。「札幌芸術の森野外美術館を代表する彫刻作品『四つの風』は、変貌し続けている。1986年、野外美術館のオープンに合わせて制作され、当初は四本だった。素材はアカエゾマツ。高さは5.4メートルある。耐水処置などは施されていない生の木だ。風雪や雨、陽光に晒され、キツツキが穴を開け、そこに小動物が棲みついたりもする。やがて朽ち果て、大地に還る。その変化をビッキは『風雪の鑿が加わる』と表現した。彫刻が変貌していくさまが作品となる。本来、立体を永く残すことを旨とする彫刻という芸術において、これは『革命』と言っても良いであろう。」(井上浩二著)作品集にはその他に「Ⅱ風を創る」、「Ⅲ夢を託す」、「Ⅳ筬島」、「Ⅴ最後の作品展」があり、自作した創作文章や童話、詩が掲載されていて、この逞しい木彫家が、一時期シュルレアリスムに影響を受けた形跡が見られます。確かに作品のモチーフには詩的な要素があり、それが砂澤ビッキワールドに不思議な膨らみを齎せているように感じます。彫り跡を残したままの造形とそれを取り巻く空気には自由で闊達な生命が宿っていると感じるのは私だけでしょうか。