Yutaka Aihara.com相原裕ウェブギャラリー

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東京六本木の「二科展」に行く
大規模な公募団体である二科展が、現在、東京六本木にある国立新美術館で開催されています。二科展に所属する若手彫刻家より招待状をいただいて、私は毎年二科展を見に行っています。若手彫刻家というのは私の教え子で、現在は教職に就きながら木彫をやっている長谷川聡さんです。今回、彼は記念大賞を授賞していて、賞に相応しい力作を出品しています。教職と彫刻家の二足の草鞋生活は、まさに私の歩んできた道そのものですが、私より若い時期より創作活動に邁進しているので、彼は今後のキャリアを考慮しても頼もしい結果を残せるのではないかと推察しています。彼は毎年全力で作り上げた木彫を出品していますが、今年の作品もさらに磨きをかけた造形感覚を見せていました。今まで彼は合板を積層加工した塊に造形していましたが、今年は合板に丸太の直彫りを組み合わせ、水の流れをテーマにした作品にまとめ上げていました。水と言っても噴水のように立ち上がる形状で、塊を彫り込んで蔓状にして、それが絡まって上昇していく按配です。上部には球体状になったカタチが渦巻いていました。蔓のように見える一本一本が捩れていて、そこに生命をも感じさせていました。これはロダンの言葉にあるように、人体の動勢は螺旋であることに依拠していて、人体を観察すれば螺旋を描くように骨や筋肉がバランスをとって成長していくことを示唆しています。捩れはその螺旋の要素を抽出したことに他ならないと私は思いました。昨年の二科展は新型コロナウイルス感染症の影響で延期され、今年漸く2年越しに開催できたことを嬉しく思います。創作活動は感染症が拡大しようが、それによる緊急事態になろうが、個人の意思で継続していくもので、その流れを絶やしてはならないと考えます。私も彼の作品を見て元気をもらいました。教え子と言っても既に彼は同志であり、ライバルなのでお互いが刺激し合える環境をこのまま続けていきたいものです。