Yutaka Aihara.com相原裕ウェブギャラリー

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「ピエロとアルベルティ」について
「ピエロ・デッラ・フランチェスカ」(アンリ・フォション著 原章二訳 白水社)の「第6章 ピエロとアルベルティ」についてのまとめを行います。初期ルネサンスの天才と謳われたレオン=バッティスタ・アルベルティはピエロの6つ年上で同時代人でありました。「アルベルティの理論はピエロに何をもたらしたのか?私たちが知りたいのはそこである。ピエロはどこまでアルベルティにしたがい、どこでアルベルティから離れ、アルベルティをこえたのだろうか?」アルベルティとはどんな人物だったのか、簡単に説明した文章がありました。「アルベルティは学問に優れていたばかりでなく容姿端麗、しかも筋骨逞しく、なにをやらしても巧みだった。」そんな人物が同時代にいれば、何かしら影響があったと考えるのが妥当だろうと思います。「アルベルティの著述家として仕事は、すでにあげた理論的な諸著作(絵画論や建築論)に加えて、喜劇、対話篇、教訓小話集、『家族論』、そしてリオネッロ・デステに捧げた『数学遊戯』等々、膨大な数にのぼる。『絵画論』のなかでピエロには触れていないが、アルベルティがピエロの画業に重大な影響をあたえたことは間違いのないところだろう。」それでは実際にアルベルティの絵画に関する文章を拾ってみると「輪郭は面と面の接するところであって、面と面の断絶を意味するものではないからだ。これは逆にいえば、明確な輪郭線の消失を意味する。眼差しは境界に対してではなく、境界の内部に向けられなければならない。アルベルティと同時代に生きた画家たちは、多くの場合境界の内部よりも、境界自体に目を向けていた。この点アルベルティにしたがったのは、ピエロただひとりであったといえるだろう。」最後にアルベルティの功績について要約した箇所がありました。「ルネサンス絵画にアルベルティ理論がもたらしたものは何だろうか?それはまず、空間構成と密接に結びついた造形性の優位であった。対象は必然的に『規則的な形体』へと、つまり空間に堅固に存在する形体へと還元された。アルベルティ自身は感性を大切にしつつ、過去を尊重したにもかかわらず、これは帰結として図像学的な配置と心理的ドラマを排除することになった。」アルベルティの後にレオナルド・ダ・ヴィンチが登場して、ルネサンス期の活動が後世にも知られるところとなりますが、その初期段階での時代の変遷に私は興味を抱いています。