Yutaka Aihara.com相原裕ウェブギャラリー

note

「人間像」について
「ピエロ・デッラ・フランチェスカ」(アンリ・フォション著 原章二訳 白水社)の「第7章 人間像」についてのまとめを行います。冒頭に「ピエロ・デッラ・フランチェスカの中心課題は人体の研究であった。」とありました。「フィレンツェには人体のカノンが二つあった。~略~ひとつはトスカーナ・ビザンティン派の伝統をうけ継ぐ長身タイプで、痩型で細作り、頭部は小さく、からだ全体をたわめ、じっとしているときでも動きを感じさせるものである。ボッティチェッリの描く人物像がその究極の型だ。もうひとつは角型といおうか、けっして短軀ではないが肩幅広く、手足のがっしりしたタイプである。粗削りの塊のような頑丈な骨格をし、動いているときでも不動を感じさせるようなこの二番目のタイプは、ジョットにより見事に描き出された。~略~ピエロはこの二つのカノンのあいだ、両極のあいだに揺れながら成長していった。」昨日のNOTE(ブログ)に登場したアルベルティがここでも登場してきます。「アルベルティは『数学遊戯』のなかでアルキメデスの原理を取り上げて、人体の力学および運動のと重量の関係について重要な考察をなしているが、それは15世紀にあって画期的なことであった。~略~アルベルティ的運動があくまで純粋な曲線で外部に表現されるのに対し、ピエロの運動は身体の内部に放たれているという点である。人体はピエロにとってただ単に重みをもつものではない。それは密度を異にするヴォリュームの群れの均衡する場であり、重さと力の組み合わせから成立するものである。」最後に類型と心理表現に関する論考がありました。「ピエロに見られるものは、不動で永遠の人間像、心をよぎる情念の影に一切かかわりのない平静さ、顔とからだの表情の無化である。石のように堅固に年を経てゆくピエロの人物を見ると、私はカテドラルの彫刻家の後継者たるジャン・フーケを思い出さざるをえない。」フーケについては本書の後半に登場してきます。