Yutaka Aihara.com相原裕ウェブギャラリー

note

「抽象芸術の誕生と還元主義」のまとめ
「なぜ脳はアートがわかるのか」(エリック・R・カンデル著 高橋洋訳 青土社)の「第5章 抽象芸術の誕生と還元主義」をまとめます。「脳科学者が学習や記録を研究するにあたって還元主義を採用し、非常に単純な事例に焦点を絞って視覚プロセスを描写したのと同じように、芸術家は還元主義を用いて、フォルム、線、色、光に着目するようになった。」という冒頭の文章があり、英画家のターナー、仏画家のモネ、露(独で活躍)画家のカンディンスキーを取り上げていました。本書に私の知っている芸術家が登場してきて、私はホッとしているところです。ターナーは海景を描いた具象画から出発し、大気が視覚場面を覆い、圧倒的な情動で自然を表現した画家として知られています。「ターナーは、『模倣という退屈な雑用』から絵画を解放した画家の一人で、相対性理論が発表されるよりかなり以前にそれをなし遂げたのである。彼はこの自立を、『より透明な絵の具を使う』『色彩を駆使して純然たる光を思わせるような揺らぎの効果をかもし出す』など、絵画に新たな方法を導入することで達成した。そしてどちらの技法も、彼の抽象芸術への移行を促進した。」次にモネです。「靄のかかったル・アーブル港の日の出の光景を描く『印象・日の出』は、写実的な描写を行なうのではなく、鑑賞者にその光景に対する主観的感覚を喚起するように意図されたゆったりした筆運びで描かれている。~略~ターナーの絵と同様、モネの絵には抽象への移行は独自の魔力を持つこと、また、抽象芸術は具象芸術より啓発的でありうることを見て取ることができる。」3人目のカンディンスキーは音楽家シェーンベルクより影響を受けたことが書かれていました。「新ウィーン楽派を創設した作曲家としてよく知られるシェーンベルクは、主調音がなく音色や音響が変化するだけの新たな調性概念を導入した。カンディンスキーは、この無調と呼ばれる音楽の革新的な形態を知って衝撃を受けた。そこから、それまでの慣例(古典音楽における主調という概念)を破棄して、より抽象的なアプローチを取れることを学んだのである。~略~抽象画という概念の開拓者であるカンディンスキーは、色彩や記号や象徴によって抽象的なフォルムを表現した最初のアーティストであった。彼は、鑑賞者が、サインやシンボルや色彩を、記憶から呼び起こされたイメージ、観念、できごと、情動に結びつけるということを直感的に認識していたのだ。」今回はここまでにします。