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小田秀夫著「山下りん」について
先日から聖像画家山下りんの生涯を描いた小説「白光」(朝井まかて著 文藝春秋)を読み始めていますが、あれ?っと気づいたことがあります。私は以前のNOTE(ブログ)に山下りんを知らなかったと書いていますが、確かに教職に就いて間もなく、私は夏休みを利用して2週間以上も北海道を旅行して、そこの正教会で山下りんの作品を初めて見ました。東京湾からフェリーで自家用車を運び、安宿に泊まりながら道内をのんびりドライヴしたのが、私にとって最良の思い出になっていて、森に囲まれたハリストス正教会で見た聖像画は不思議な光に満ちていました。おそらく森の中の正教会は上武佐ハリストス正教会だったかもしれません。その後になって私は山下りんのことを調べたのでしょうか、当時はネット情報を得ることもなかったのですが、「白光」を読む前から、私は山下りんがロシアに留学していたことを何となく知っていました。自宅の書棚を見ていたら、薄めの文庫本が見つかりました。小田秀夫著「山下りん」で、副題に「信仰と聖像画に捧げた生涯」とありました。ひょっとしてこの文庫本は正教会か、あるいは旅先の書店で購入したものかもしれず、北海道旅行の後で私はこれを読んでいた可能性があります。ほとんど記憶にないのですが、そうでなければロシア留学のことなど私の頭になかったはずです。古い文庫本を捲ると、こんな文章に目が留まりました。「(山下りんの)三歳年上の兄重房と、四歳年下の弟峯次郎の兄弟があり、弟峯次郎はやがて出て母の実家である小田家を継ぐこととなる。~略~筆者は峯次郎の孫に当る。」つまり著者は山下りんの親戚になるわけで、その筋の人たちから山下りんに関わる情報を得て本書を書き上げたのでした。山下りんの自筆履歴の書き出しにこんな文章があり、本書にそのまま載せています。「余生来画を好む然共郷里に良師無くむなしく過る」つまり、私は元々絵画が好きだけれど故郷に良い先生がおらず虚しい時を送っている、という意味で、山下りんの胸中を物語っている文章です。本書はドキュメンタリーであるため、事実しか記述がなくドラマ性がないと思っています。私は本書で確認しながら、楽しんで小説「白光」を読んでいこうと思っています。