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「篠田守男-Subconscious-」について
今日、長野県安曇野にある碌山美術館から、同美術館で個展開催中の「篠田守男-Subconscious-」展で販売している作品集が届きました。美術館が遠方過ぎて個展には行けないので、美術館のネット販売を利用して注文をしたのでした。彫刻家篠田守男先生は、私の大学時代に教壇に立っていられましたが、私は人体塑造をやっていて、篠田先生は実材を扱うコースで指導をされていたため、自分とは縁がありませんでした。それでも南天子画廊の個展を見に行って、そこで先生の著作「快楽宣言」を購入し、彫刻作品だけはよくチェックしていました。作品集によると、私の3つ先輩の俳優六平直政さんとは師弟関係にあったらしく、彼の文章に当時先生がアトリエに使っていた小松製作所のことが書かれていました。私も一度そこにお邪魔したことがありましたが、先生は不在で、制作途中の作品をじっくり見させていただいたのが記憶に残っています。粘土で塑造をやっていた自分からすれば、先生が作る精密機械のような金属製の立体が、自分の作っている彫塑と同じ分野であるとは信じ難いものがありましたが、大学では池田宗弘先生が真鍮、保田春彦先生や若林奮先生が鉄という実材を扱っていたので、彫刻の表現の振り幅が大きいことには驚くに値しないとも思っていました。篠田先生の作品タイトルは「テンションとコンプレッション」という一貫したシリーズで、ワイヤーが支柱から張り巡らされ、金属部品の一部を宙吊りにしている構造をもっています。緊張ある張りで、物体を宙に浮かせ、同時に近未来的な空間を創出させる装置だろうと、私は勝手に考えていますが、この微細な構造を90歳を超えた今も、先生は作り続けているのでしょうか。作品集に掲載されていた美術評論家からの手紙を引用させていただきます。「まるでピアノの調教師のような細かい仕事の持続のなかで、あなたは自分にしか聴き取ることができない音色を感知して、微妙に調整している、そんな想像をしてみていたこともあります。作品の構造に浮遊感をもたらしているのは、何かーなどと、その方面に疎いわたしでも、あなたの作品のもつ”物理”には不思議な”魔性”を感じたものです。」(酒井忠康著)