Yutaka Aihara.com相原裕ウェブギャラリー

note

金沢文庫の「春日神霊の旅」展
今日は工房での作業を休んで、横浜市金沢区にある神奈川県立金沢文庫で開催している「春日神霊の旅」展に家内と行ってきました。副題に「杉本博司 常陸から大和へ」とあって現代美術家の杉本博司氏が企画した展覧会であることが分かっていました。以前、杉本氏が東京都写真美術館で大掛かりな個展をやっていて、それを見た私は大変な感銘を受けました。それ以来、杉本氏の現代美術の考え方に注目してきました。今回の企画は神護景雲二年(768)に造営された春日大社の遺物に現代的な補作を加えた作品が展示されていて、その解釈に目を見張りました。面白かったのは「油注(春日型)」と「春日神鹿像」2点、いずれも木彫家須田悦弘氏による精密な木彫植物が加えられていて、そのコラボレーションに杉本氏のセンスが光っていました。同展の主旨は、平城宮鎮護の守護神ながら、春日大社は東国とも深い所縁があり、そうした春日信仰を紹介するものです。その中に杉本氏のコレクションもあり、彼自身の言葉で春日神霊の旅を語っているものがありました。「私は古美術収集の過程で、30代に春日鹿曼荼羅を入手し得たことによって、そしてその畫を毎日見続けることによって、その畫の精髄を我が身に浸透させることができたような気がした。~略~今私は、私の遺作と位置付ける『小田原文化財団江之浦測候所』に春日社を招魂するにあたり、神護景雲二年、常陸から大和への旅の途次、神霊がこの地をお通りになった故事に思いを馳せ、この展覧会を企画することで、私の心の旅路をも辿れるのではないかと思う。」同展の詳しい図録は予約販売になっていて、それぞれの展示作品に対する考察は図録到着時に改めますが、私が校長職にあった頃に、修学旅行で毎年のように訪れた奈良公園にあった春日大社を懐かしく感じています。春日大社に伝わる遺産がこのようなカタチで、自分の目に入ってくるとはちょっと驚きました。私は森の中から赤い柱が見えてくると、俄かに興奮するほど春日大社が好きでした。図録を楽しみに待ちたいと思います。