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「ウィーン工房」を読み始める
「ウィーン工房」(角田朋子著 彩流社)を今日から読み始めます。本書はオーストリアで出版されたウィーン工房に関する書籍の翻訳ではなく、著者が博士論文としてまとめあげたもので、綿密に計算された骨子(章)によって展開される重厚な論文になっています。私は1980年から5年間、ウィーン国立美術アカデミーに籍を置いていたので、ウィーン工房のデザインを実際に目にしていました。美術館にはG・クリムトやE・シーレの作品があり、また街中には建築家O・ワーグナーの建造物があって、ウィーン工房を取り巻く刺激的な時代を感じることができました。それはドイツのバウハウスともロシアの構成主義とも異なるウィーン独特の感性に支えられたデザインでした。ウィーン工房に興味を持った私は、当時の生活費を工面して、私にとっては大変高価なウィーン工房に関する書籍を何冊か買い求め、拙いドイツ語でとつおいつ読んでいましたが、日本に持ち帰ってきた今となっては外国語の書籍など読む意欲はとっくに喪失し、書棚の飾り物になっています。そこにこの本書「ウィーン工房」が登場してきたので、早速読むことにしました。冒頭に「本書は、1890年代から1930年代までのオーストリア近代デザイン史研究であり、1903年にウィーンに設立された『ウィーン工房』(1903-32)の近代デザイン史上の意義を解き明かすことを目的とする。」とありました。また「近代的なデザイン概念が成立する19世紀後半から20世紀初頭を歴史的考察対象とするデザイン史研究は、従来、日常の生活世界との結びつきの中で構想され生み出された制作品を考察の中心に据えてきた。」とあり、デザイン全般史に関する考察を述べています。そこに現代では新たな視点が加わっているようです。「新たな研究動向として、近代デザイン問題を制作品の様式や機能の水準においてではなく、いわばソーシャル・デザインと呼べる水準において解明する視点が明確にされた。これは、デザインするという行為、ならびにデザインされたモノが人々に及ぼす作用に着目し、デザインを社会、共同体、文化構造そのものの変革の試みと捉えて研究する立場である。」本書を楽しみながら読んでいきたいと思います。