Yutaka Aihara.com相原裕ウェブギャラリー

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六本木の「メトロポリタン美術館展」
先日、東京六本木にある国立新美術館で開催中の「メトロポリタン美術館展」に行ってきました。事前予約はせず当日券を購入して会場に入りましたが、それほど混雑は見られず、「西洋絵画500年」と銘打った名作ばかりが並んだ展覧会をじっくり見て回ることができました。本展は15世紀前半から19世紀末までの西洋絵画を網羅していて、私は久しぶりにこうした名作展に足を運びました。20代の頃に5年間ヨーロッパに住んでいた私は、各地にある有数な美術館に行って、壁一面に掛けられた西洋絵画を飽きるほど眺めていました。当時の私はヨーロッパの重厚な歴史が培った造形理論から離れることができず、自分は何をするべきかを見失っていました。5年間の迷走の後、彫刻の概念は残して、私にはどうしようもない日本人観があるのを認めつつ、現在の自分の世界に辿り着いたのでした。本展はアメリカの美術館が所有するコレクションですが、私は西洋臭から逃げたい過去の己に対峙してしまう結果を恐れていました。しかし加齢のせいか、自分の邁進してきたキャリアのおかげか、西洋美術とは距離をとって眺められている自分に気づきました。「Ⅰ 信仰とルネサンス」はキリスト教の神話的世界を描いている絵画が占めていました。「Ⅱ 絶対主義と啓蒙主義の時代」はある意味では西洋らしい哲学や道徳観に裏付けられた絵画がありました。「Ⅲ 革命と人々のための芸術」は前時代に構築された絵画世界の論理を打ち砕き、革新的な絵画世界を作っていこうという気概に溢れた作品が並んでいました。これだけ見てもメトロポリタン美術館のコレクションは大変充実していると言えます。私自身が興味を持った個々の作品がありますが、それは別稿を起こそうかと思っています。現在では芸術は多様化していて、美術館に収まらないものもあります。でも人類史の中で大変重要な役割を果たしたのは西洋美術であることは疑う余地もありません。それだけに影響力も強かったと言わざるを得ませんし、私の造形への道で、何年も習作を繰り返したのも西洋の概念に基づいた造形だったのでした。