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「 『近代建築』の永遠化を求めて」のまとめ
「オットー・ワーグナー建築作品集」(川向正人著・関谷正昭写真 東京美術)の「第3章 『近代建築』の永遠化を求めて」をまとめます。本書はこの第3章が最終章になります。ここではワーグナーの代表作であるウィーン郵便貯金局とアム・シュタインホーフ教会を取り上げています。ウィーン郵便貯金局は旧市街にあり、40年前は私の散策コースでした。アム・シュタインホーフ教会はウィーン近郊にあって、建物内部をじっくり見て回ったことを今でも思い出します。「ワーグナーは、芸術形態を永遠に維持するには何をすべきかと考え始め、最終的な現象(芸術形態)を念頭に置きつつ被覆の材料と施工方法を再検討していった。その結果、彼は、かなりの厚みをもった石板を同じく恒久性のある金具で固定する被覆方法に到達したのである。たとえば、郵便貯金局では、2階までの外壁は花崗岩の、3階以上は白大理石のプレートで被覆し、しかもボルト留めの表現とした。最上階は黒色のガラスプレートを張る。金属部分はアルミニウムで、ボルトも外に出る頭部はアルミニウムになっている。ガラスも含めてどの被覆材も耐候性があり、入手と施工が容易であり、コストの抑制が可能と彼が考えたものである。アム・シュタインホーフ教会も白大理石のプレートで被覆されたが、ここでは金属被覆材として銅を選んでいる。窓枠の鉄ですら銅で被覆され、さらにドームの銅屋根は金箔で被覆された。」私は20代の頃にこれを見て、構造となっているボルトが建物全体の装飾要素として美しい調和を見せているのに感動していました。同時代の近代建築を牽引した建築家としてアドルフ・ロースが登場してきますが、ワーグナーと異なる被覆方法で装飾のない建物を作りました。「ロースは、同じ大理石でもカラフルで大理石特有の文様が浮き出たものを好み、さらに磨き上げ、光沢を出した。いくつもの被覆材を繊細に組み合わせるワーグナーと違って、ロースは大理石、木、鏡などの空間に及ぼす効果を尊重し、中心となる被覆材を前面に推し出した。」ロース・ハウスも私の散策コースに入っていて、ウィーンの街はバロックやゴシック、ロココの装飾過多とも思える建造物からワーグナー、ロースの近代建築まで、まるで建築の野外展覧会場のようで、歩いていても楽しい時間を過ごせていました。私はウィーンで実際の彫刻を学んだことより、毎日散策をして建造物を眺めている方が勉強になったような気がしています。そんな街の構造実感が積み重なって、現在の私の集合彫刻に繋がっているのではないかと思っています。