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「『日本の美学』の形成」のまとめ
「美学事始」(神林恒道著 勁草書房)の第一部「美学と美術史」のうち「2『日本の美学』の形成」についてまとめます。「エキゾティック・ジャパンに憧れて来日した、明治政府のお雇い外国人の一人であったフェノロサが、京都奈良方面に旅行したそのおりに、当時『廃仏毀釈』のあおりを受けて打ち捨てられ顧みられることのなかった古仏に出会い、日本の伝統的美術の素晴らしさを再発見したということである。」これらが動機になってフェノロサは「美術真説」という日本美術擁護論を立ち上げたのでした。ここで登場する概念に「妙想」があります。「『妙想』には『アイジア』とルビがふられているため、しばしば『アイデア』、つまり『着想』と単純に混同されるところだが、今日ならば、むしろこれは美的『理念』とでも訳されるべきものだろう。フェノロサによれば、昨今の西欧の画家の多くは実物を模写することに傾き、妙想の表現がおろそかとなり、『理学ノ一派』に過ぎざる状況に陥っている。これに較べるならば、写実をあえて求めない日本画は妙想の表現において優れているというのである。~略~これまでの外からの日本『美』の発見から、内からの『日本』美の自覚へ向けての変化が生じてきたのは確かだろう。この『日本』美の自覚への転換は、『美術』と翻訳された西欧的な『アート』の観念をそのまま鵜呑みにするのではなく、日本あるいは東洋の固有の芸術観に照らして改めて『美術』とは何かを反省するところから始まったのである。」さらに岡倉天心が東京美術学校で講じた「日本美術史」に西洋との比較論がありました。天心の言葉を引用いたします。「西洋画は彫刻と共に進み、東洋画は書と共に進んだ。であるから東洋画は、西洋画の陰影を用ひるに反して、線の大小を以て、自らこれを現はすのである。『諺に曰く、書を能くするもの、画を能くする』と。故に筆力は、東洋絵画の基本となり、以て古今を貫くものと言ふことが出来る~略~東洋芸術は絵画的で、西洋芸術は彫刻的な味がある。東洋芸術は線であり、西洋芸術は造形の表現に興味を抱く。東洋芸術は二元を表し、西洋芸術は三元を表わす。初期イタリア人の時代からの西洋絵画は光と影とで表現する。東洋に於ては、宋朝以来墨の濃淡の配合に、より以上の意味が与えられたが、而も東洋芸術は線を以て起源としていることは真理であった。過去に於ては、書芸と絵画は同一であったと言う。~略~そして絵画に於て、運筆は我々の自然観と大いに関係する。描写の技倆の美しさはただ単に実際の対象を描く技能にあるのみではなく、筆勢に秘められた抽象の美にあるのである」今回はここまでにします。