Yutaka Aihara.com相原裕ウェブギャラリー

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週末 完成間近な彫刻を見て…
日曜日になると、美大受験を控えた高校生や毎年二科展に出品している若手彫刻家が工房にやってきて、私と一緒に制作をしています。心理学で言うところの社会的促進という効果が働き、一人で制作しているより制作に弾みがつきます。背中を押されて…という表現を私はよく使いますが、同じ工房内でそれぞれ違う作業をしているにも関わらず、集中力が増してくるのは、私以外の2人にも言えることではないかと思います。私の新作は愈々完成間近になりました。図録用の写真撮影は既に終わっているので、気は楽になっていますが、もう一息で梱包が出来るところまできました。私の創造する世界は、単体で見せる彫刻ではありません。複数の陶彫作品が点在する空間造形です。遺跡の発掘現場を模していますが、それだけに留まらず、それぞれの個体と個体を繋ぐ空間に意味を持たせようとしています。しかも地中深く埋められた造形が一部を地上に晒されていて、形態は欠損した状態にあります。今年の新作は点在する形態を取り囲む大地も不定形にしてあって、三層構造にもなっています。新作はしっかり作り上げたマトモなものが何一つないとも言えます。それでも全部を晒さないところを私は余白と考えていて、見ている人たちに想像で補っていただこうと意図しているのです。作品に抽象化なり象徴化なりを持ち込むのは、具体を使った造形思考を鑑賞者に提示しているわけで、その解釈は三人三様でいいのではないかと私は思っています。作品には社会問題を喚起させるものや、個人の記憶に迫るものがあります。私の作品がどう扱われるかは、その作者自身には分かりませんが、何かを感じてもらえればそれで良しとしています。完成間近な彫刻を見て、果たしてどうしたら完成と言えるのか、迷いも生じます。作品に込めた主張が単純ではないこともその要因のひとつです。何となくやり残した部分があるので、次のステップに繋げていけるのかもしれません。