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映画「シン・ウルトラマン」雑感
先日、横浜市鴨居にあるエンターティメント系の映画館で「シン・ウルトラマン」を観てきました。これは空想特撮映画と称された娯楽作品です。私はウルトラマン世代で、初代ウルトラマンの活躍が頭を過ぎっていました。あんな荒唐無稽な世界を現代に甦らせるのには無理があっただろうに、「シン・ゴジラ」を制作した庵野秀明・樋口真嗣コンビに今回も期待を抱きました。感想としては個性的な怪獣(禍威獣)との闘い方に工夫が見られ、あぁ、ここはこうしているんだと妙な納得がありました。初代を知らない若い世代も本作を観ていると思いますが、私のように旧作と本作をつい比較検討してしまう観客も多かったのではないかと思います。図録を購入したら今回私が注目していた点が掲載されていたのでちょっぴり嬉しかったのですが、ウルトラマンがどんなデザインコンセプトで創られていったのか、それが知りたかったのです。図録には「円谷プロから招聘されて『ウルトラQ』の中盤から参加した成田(亨)は、怪獣デザインで唯一無二の才能を発揮する。ただ単に、既存の生き物を巨大化させたような旧来の怪獣を否定して、自然界に存在するさまざまな動植物や幾何学的な形状を合体・変形させ、モダンアートを思わせる抽象化表現を採り入れて意外性に満ちた形を生み出し、一大怪獣ブームを巻き起こした。そして、次なる作品の主役である前代未聞の巨大ヒーロー、ウルトラマンのデザインに挑んだ。脚本家の金城哲夫から伝えられた『かつてない格好よく美しい宇宙人を』という言葉を手がかりに、成田は、古代ギリシャの哲学者プラトンの理念にたどり着く。怪獣がカオス(混沌)ならば、ヒーローはコスモス(秩序)であるという考え方だ。不要なものを削ぎ落とし、極めてシンプルな気高い生命の形を追求。」とありました。口元にアルカイックスマイルを湛えたギリシャ彫刻のような神々しい姿がウルトラマンだったのでした。そこにはカラータイマーがなく、両目の覗き穴もない造形だったため、本作ではCGを駆使して理想に近いウルトラマンが造形されたのでした。禍威獣や外星人が一体ずつ襲来して、ウルトラマンと1対1で対峙する約束事が、本作にもあり、嘗てのテレビ版を髣髴とさせるストーリー仕立てに懐かしさを感じたのは私だけではないでしょう。