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汐留の「ピカソ展」
先日、東京汐留にあるパナソニック汐留美術館で開催されている「ピカソ展」に行ってきました。本展はイスラエル博物館所蔵による作品群で、副題を「ひらめきの原点」としています。主な出品作品は版画や素描でしたが、タブローに取り掛かる前段階で、画家はさまざまなテーマ設定の考案や実験を版画や素描で行なっていて、まさにそれらがひらめきの原点になっていると感じました。パブロ・ピカソは言わずと知れた20世紀最大の巨匠で、その創作の変遷は美術史に残るような足跡を残しています。作品にはどこを切り取ってもピカソと判る個性があって、観る度に新鮮な感動があるのがピカソの世界です。図録には「驚異的な創造性、絶え間ない改革、魅力的な個性で知られるパブロ・ピカソは、おそらく20世紀のヨーロッパで最も影響力のある、成功した芸術家であり、歴史と政治の大きな変化、前衛運動、新しい芸術形態が生まれたこの時代を象徴している。過去の伝統を吸収し、同時代の芸術家たちからインスピレーションを得ながらも、彼の芸術は今なお独創的かつ革新的である。」(ターニャ・シラコヴィッチ著)とあり、私も数多のピカソ展に足を運びましたが、その都度ピカソが西欧の文化に立脚していることを思い知らされました。それはギリシャ神話に登場するミノタウロスをピカソは繰り返し描いていて、それは暴力、愛、好色、そして絶望を呼び起こす象徴として、また自らの化身としてシュルレアリスムの共鳴の中から生まれたものだったようです。ピカソの世界には、いかにも西洋臭さが立ち込めているのは、そのせいだろうと思っています。ただし、ピカソの版画技法の革新性については私にも入り込める余地があると感じています。「版画の最も重要な技法ーエッチング、エングレーヴィング、ドライポイント、アクアチント、リトグラフ、リノカットーを駆使して制作された本展の作品は、ピカソの驚異的な技術力を証明するとともに、彼のモットーである『専門家のようにルールを学びなさい。そうすれば、芸術家のようにルールを破れるようになる』を実証している。」(前述の著者)破壊と創造はピカソが身を持って体現した制作工程で、新しい世界を手中に収めるために実験や努力を惜しまなかった巨匠でもありました。