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「彫刻の歴史」を読み始める
今日から「彫刻の歴史」(アントニー・ゴームリー マーティン・ゲイフォード共著 石崎尚 林卓行訳 東京書籍)を読み始めました。先日まで読んでいた「美学事始」に比べると、本書は分厚い書籍で、鞄に携帯するには無理があるため、自宅の食卓に置き、折に触れて読むことにしました。「彫刻の歴史」の副題は「先史時代から現代まで」とありますが、本書は時系列で歴史を扱ったものではなく、独特な分類で構成されています。著者アントニー・ゴームリーは現代を代表するイギリス人彫刻家で、もう一人の著者マーティン・ゲイフォードは美術評論家です。この2人が対話する形式で18項目のテーマを扱っています。訳者はゴームリーを石崎氏、ゲイフォードを林氏が訳出し、その微妙なズレも著者2人の息づかいを伝えるものとして残してあるようです。私がこの持ち運びに難儀をした重量のある書籍を購入した要因は、掲載されている図版の豊富さにありました。しかも今まで見たことがないような不思議なものや奇怪なものまであって、その面白さに心を打たれたからに他なりません。本文に入る前に「私がここで議論したかったのは、ものの世界において、時の経過とともに彫刻がどんどん奇妙な物体になってきたとしても、彫刻には場所や文化、文脈、そして何千年もの時間を超えて一貫したテーマが横たわっているということです。だから『彫刻とはなにか?』という問いは『人間とはなにか?』という別のより大きな問いと密接に結びついているのです。」(A・ゴームリー)という内容を示唆するコトバがあり、「その領域は広大です。空間はもちろん時間という点でも。けれども私たちはそのすべてを渉猟しつくそうとは思いませんし、年代順に並べて調査しようとも思いません。本書の試みが進むにつれ、私たちはさまざまな時代や地域から選んだ作品を組み合わせて考えてみることを、刺激に満ちたーはっきりいえば楽しいーことと感じるようになったのです。こうして私たちは、遠い祖先たちが制作したものと、まさにいま創造されているもののあいだの連続を考えるようになりました。」(M・ゲイフォード)というコトバで、対話の一歩を踏み出すことになったようです。図版を見ながら楽しんで本書を読んでいこうと思います。