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「一期は夢よ 鴨居玲」を読み始める
「一期は夢よ 鴨居玲」(瀧悌三著 日動出版)を今日から読み始めることにしました。本書はどこで購入したのか忘れてしまっていて、ずっと自宅の書棚にありました。きっと画家鴨居玲の個展会場で購入したものかもしれず、鴨居ワールドに感銘を受けてその生い立ちを知りたくなった自分が即刻読むつもりで買い求めた可能性があります。著者の瀧悌三氏は毎年ギャラリーせいほうに足を運んでくださる美術評論家で、私の個展の寸評を美術系の新聞に書いていただいています。本書は著者をよく存知上げているので、私としては身近に感じている書籍でもあります。さて、鴨居玲は西欧の薫り漂うバタ臭い絵画表現で知られた画家で、57歳で自殺をはかり、昭和60年に他界しています。そんな画家鴨居玲の生涯にはどんなことがあったのか、動機となったものを紐解けば、画家が何を表現しようとしたのかが分かるかもしれません。鴨居ワールドには描かれた対象以外の事物が登場しません。しかも暗く深遠の底を覗くような気持ちにさせられるのです。重厚な人物を描いたものが有名ですが、私が気に入っている作品は教会が宙に浮いたような作品で、人物の登場しない空間だけが広がる荒涼たる絵画です。その世界を画家に描かせた所以も知りたいと思っています。本書の最後に著者の付記があり、こんなことが書かれていました。「鴨居玲は、いかに絵を描くか以上にいかに生きるかに命を賭けたような処がある。そこが並みの画家と生き方が違い、絵も自己告白体で通し、いわゆる華美をひけらかす絵らしい絵は描かなかった。本稿は、その所以を明らかにするための一つの試みと言ってもよく、今後現れるであろう鴨居玲論や鴨居玲研究の手がかりなり資料なりになれば、私としては幸いと思っている。」私にとって興味深い画家の生涯を通して、多少でも自らの創作活動の糧を得られればよいと考えています。じっくり読み込んでいきたいと思います。