Yutaka Aihara.com相原裕ウェブギャラリー

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「汚れた生活とすばらしい愛」について
「アンドレ・ブルトン伝」(アンリ・べアール著 塚原史・谷正親訳 思潮社)の「第Ⅲ部 シュルレアリスム革命」の「第四章 汚れた生活とすばらしい愛」についてまとめます。ブルトンの浮名は幾度となく流れ、やがて恋愛対象が突如やってくる運命に抗えないこともありました。「31歳のブルトンは、相思相愛の恋に胸を燃やしていた。問題は、社会的な役割もそれなりに担うようになったいま、この恋をどうやって長続きさせるか、だった。二人の男の間で揺れ動くシュザンヌは、この1928年を夢の中でのように過ごしてゆく。さまざまな憧れもなんとか両立させつつ、シュザンヌの夢を現実のものにしてやろうとブルトンは努力した。」また、ブルトンは娼婦という職種を認めていなかったのでした。「金で愛を買うのは嫌いで、娼婦宿を閉めるべきだと主張する人間のひとりだった。『娼婦宿ではすべてが金で売り買いされるし、こうした場所は精神病院か刑務所を思わせる。』『ナジャ』に書かれていることと一貫しているが、ただ、いまではナジャの代わりにシュザンヌという魅力的な女性が登場してきている。シュザンヌとともに生きるうちに、ブルトンは、愛は必ず相思相愛になる、と述べるようになった。」ここに赤軍の組織者でありながらソ連から排除されたトロツキーとの関わりが出てきます。「ブルトンの立場は、シュルレアリストとその友人たちがこれまでそのおかげで自分たちを認知できていた『積極的な無垢さ』に訴えかける、というものだった。この『積極的な無垢さ』は、言い換えれば、一種の暴力となりうるのだが、それが個人の利益のためだとか、不毛な争いのためにもちいられるのをブルトンは残念がっているのである。」そのうち「シュルレアリスム第二宣言」が著されることになりました。「シュルレアリスムの中ですでに死んでしまったものと、いままで以上に生き生きとしているものを見分ける基準が、『第二宣言』によってあきらかにされた。破壊というすばらしい目的を各個人のあらゆる便宜に優先させ、もっとも厳密な精神の防腐法によって偽りの証言の専門家を徹底的に排除するブルトンは、本書において、精神の権利と義務の総和を出してみせたのである。」今回はここまでにします。