Yutaka Aihara.com相原裕ウェブギャラリー

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「互いの中の互い」について
「アンドレ・ブルトン伝」(アンリ・べアール著 塚原史・谷正親訳 思潮社)の「第Ⅵ部 沸き立つモラル」の「第二章 互いの中の互い」についてまとめます。「歴史とともに歩み、歴史に判断を下すためにじゅうぶん距離を置くならば、ブルトンはみずからの存在の詩的重要性をけっして見過ごすことはないだろう。友人たちとともに、彼は再度アナロジーについて議論した。彼にとって、手の内のマッチの焔は潜在的にライオンのイメージを持ち、その逆もおなじだった。こうして、シュルレアリスムの偉大な伝統にのっとり『互いの中の互い』という遊戯が始められた。」造形美術の話題に触れた箇所がありました。「ブルトンはベネチア・ビエンナーレで絵画大賞を獲得したマックス・エルンストの除名を発表した(もっとも、版画賞はミロに、彫刻賞はアルプにあたえられていたが)。心ならずも、ブルトンは除名通告をみずからが作成するという条件で、多数決による決定にしたがったのである。公式の栄誉に甘んじることによって、エルンストが運動の当初の原則である『非順応主義と、彼がこれまで拠り所としてきた革命精神』を否定したことを、ブルトンは協調した。結局、シュルレアリスムの盟約を破ったのはマックス・エルンストのほうだったのである。」その後、ブルトンはケルト世界への接近があり、やがて私の愛読書でもある「魔術的芸術」を著します。「もはやブルトンは、依頼に応じてあちこちにいくつかの文章を書くだけになってしまったように思われていたが、そんな矢先に、1957年5月末、ついに素晴らしい図版入りの作品があらわれた(印刷完了の日付は25日)。彼が四年の歳月を費やした『魔術的芸術』である。~略~魔術的芸術という概念は、魔術的目的のための造形芸術と、それ自体魔術的効果を持った芸術の、二つの意味を合わせ持っていた。反論を避けるために、ブルトンは、この概念に流動的な性質をあたえながら『魔術的芸術』という表現をはじめてもちいたノヴァーリスを引き合いに出した。非常に密度の高い序説の中で、ブルトンは科学者、つぎに秘術者にとってこの表題が待つさまざまな語義を列挙してから、未開社会における儀礼と結びついた芸術や錬金術の伝統を例にとり、その後で、魔術的芸術とは『それを生み出した魔術を何らかの資格で再び生み出す』芸術であると結論づけた。」今回はここまでにします。