Yutaka Aihara.com相原裕ウェブギャラリー

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「批評家マルセル・デュシャン」➂について
「マルセル・デュシャン全著作」(ミシェル・サヌイエ編 北山研二訳 未知谷)の「第三章 批評家マルセル・デュシャン」について、実際に数多の芸術家を批評しているデュシャンの文章が残されていました。ここで取り上げた芸術家が多いため、私が気に留めた人を選びます。まず彫刻家アルキペンコ。「彫刻の彩色という考え方はそれ自体は革新的なことではないけれども、非常に驚くべき結末に至った。彼はその新しいフォルムの着想によって興味深い技術以上のものを表現できたのである。彫刻に対するアルキペンコの貢献とは、ヴォリューム〔量塊〕を捨てるというものになっていることだろう。」次に彫刻家アルプ。「アルプがもたらした最も重要な要素とは、この上なく微妙なフォルムを持つ『ユーモア』であり、幻想的着想の類なのだが、この幻想的着想こそダダ運動に旺盛な活気を与えたため、ダダ運動はキュビズムと表現主義の純粋に知的な傾向とは対立したのである。」次に彫刻家コールダー。「コールダーのやり方は、〔第一次〕大戦後に突然起きた芸術『革新』のさなかにあって、どの様式からも非常に隔たっていたので、彼自身の動くフォルムに新しい名前を考え出さなければならなかった。彼はこれらを『モビール』と名づけた〔名づけたのはデュシャンといわれている〕。」次に画家デ・キーリコ。「彼はフォーヴィスムもキュビズムも避けて、『形而上的絵画』と呼びうるようなものを創始した。抽象から生じる題材を活用するのではなく、『形而上的世界』でしか結合し合わない諸要素を画布の上で遭遇させたのである。」次に画家エルンスト。「その技法上の発見のなかでも、中国の古い『フロッタージュ』という手法の採用は木材の肌理やきわめて多種多様な素材の肌理を『自動的に』浮き上がらせる。マックス・エルンストは、シュルレアリスム運動が1924年に結成されるとき、シュルレアリスムの冒険に飛び込んで作家たちと同盟したダダグループの唯一の画家であった。」次に画家カンジンスキー。「のちにカンジンスキーは、職人的痕跡がいっさいない一層純粋な表現に至り着いた。彼はその手をもっと厳しく鍛錬したのである。カンジンスキーは定規とコンパスで線を引き、絵画の新しい見方を鑑賞者に与えた。それは、無意識の身震いに従うのではもはやなく、感情を断固断罪し、画布の上に思考を直接転写することだった。」紙面の都合で今回はここまでにします。