Yutaka Aihara.com相原裕ウェブギャラリー

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週末 文化財を堪能した週
週末になりました。今週の制作状況を振り返ります。新作である陶彫立方体の151点が最終的な段階を迎えているため、今週は朝から夕方まで工房に籠って精一杯陶彫制作に励んでいました。1週間のうち水曜日だけは工房を休んで、東京の美術館を回りました。制作三昧で疲れ気味だったので、美術館巡りは心のリフレッシュになりました。竹橋にある東京国立近代美術館で開催中の「重要文化財の秘密」展は、平日にも関わらず大変混雑していて、学芸員の企画が、多くの人々の興味関心を捉えた結果だろうと思いました。各地美術館収蔵品の中で一級品を借りるのが大変だったことは理解できます。それでもこれだけの重要文化財が同じ空間に並置されるのは、なかなか見応えがありました。全体的に見渡して雑駁に申し上げると、いずれの作品も美術の教科書に掲載されている作品ですが、それを取っ払って内容だけで見てみると、日本として長い歴史に培われた日本画や工芸の作品には、技巧的に蓄積された重みがあると感じました。油絵や彫塑は明治以降に西洋から伝来したものなので、本場には敵わないように思いました。日本人は生真面目な人種で、西洋画を一所懸命にまた真摯に学んでいますが、やはり新奇なものを精一杯取り入れた感覚があって、ヨーロッパの美術館で数々の西洋画を見てきた者の眼には、内容の希薄さを感じてしまいます。個々優れた作品であるのは間違いではありませんが、これはあくまでも私個人の感想と思ってください。恵比寿にある東京都写真美術館で見た写真家土門拳による古寺や仏像を撮影した写真は、西洋系の内容の希薄さがなく、幾星霜を耐えてきた美的価値が浮き彫りにされた重厚な感覚がありました。土門拳がテーマに古寺や仏像を取り上げたのは、私たち日本人に元々根付いている美意識を目覚めさせようと狙ったものかもしれず、そうであるならば、私は若い頃にまんまと土門拳の罠に落ちて仏像好きな者になったと思っています。ともかく今週は文化財を堪能しました。