2023.08.08
「風土」(和辻哲郎著 岩波書店)の「第二章 三つの類型」の「1 モンスーン」について、気を留めた箇所を選びます。そもそもモンスーンとはどんな気候なのか、説明の文章を引用いたします。「湿気は最も堪え難く、また最も防ぎ難いものである。にもかかわらず、湿気は人間の内に『自然への抵抗』を呼びさまさない。その理由の一つは、陸に住む人間にとって、湿潤が自然の恵みを意味するからである。洋上において堪え難いモンスーンは、実は太陽が海の水を陸に運ぶ車にほかならぬ。この水のゆえに夏の太陽の真下にある暑い国土は、旺盛なる植物によって覆われる。特に暑熱と湿気とを条件とする種々の草木が、この時期に生い、育ち、成熟する。大地は至るところ植物的なる『生』を現わし、従って動物的なる生をも繫栄させるのである。」著者はその代表としてインドに焦点を当てています。そんな風土に生きるインド人を、非歴史的非統制的なる感情の横溢としての受容的忍従的態度と表現しています。「ヴェダに現れたる想像力はインドの人間の感受性がいかに鋭敏であったかを示している。あらゆる自然の力はその神秘性のゆえに神化される。日、月、空、嵐、風、火、水、曙光、大地のごとき目ぼしいもののみならず、森も野も動物も、総じて受容的なる人間にある力を感じさせる限り、それは神かデーモンである。だからバラモンの神話の世界の住人は、恐らく他のいかなる神話のそれよりも豊富であろう。しかしかかる多数な神々は、血統的に一つの家族としてまとめられるということもなく、また自然現象の関連をモデルとして一つの体系に統一されるということもなかった。」インドの美術に関して論じている箇所もありました。「インドの彫刻や建築に細部の支配の欠けていること、全体はかかる細部の集合であって、真に統一的な全体となっておらぬこと、従って全体として見とおしのつかぬ、明白さの欠けたものであることは、いかなる強弁も覆い隠し得ない点である。インド美術の魅力は、細部の豊富さによって人を引き回し、酔わせ、その酩酊によって人を神秘的な気分にさそい入れるところにある。」その後、論考はインド哲学にかなりの紙面を割いていましたが、今回はここまでにします。