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「モンスーン的風土の特殊形態」➁
「風土」(和辻哲郎著 岩波書店)の「第三章 モンスーン的風土の特殊形態」の中で気に留めた箇所をピックアップします。今回は➁として日本人の性格についての論考です。「まずモンスーン的な受容性は日本の人間においてきわめて特殊な形態を取る。第一にそれは熱帯的・寒帯的である。すなわち単に熱帯的な、単調な感情の横溢でもなければ、また単に感情の持久性でもなくして、豊富に流れ出でつつ変化において静かに持久する感情である。四季おりおりの季節の変化が著しいように、日本の人間の受容性は調子の早い移り変わりを要求する。~略~次にモンスーン的な忍従性もまた日本の人間において特殊な形態を取っている。~略~すなわち単に熱帯的な、従って非戦闘的なあきらめでもなければ、また単に寒帯的な、気の永い辛抱強さでもなくして、あきらめでありつつも反抗において変化を通じて気短に辛抱する忍従である。」そんな中で日本人特有の「家」の概念が培われていました。「『家』としての日本の人間の存在の仕方は、しめやかな激情・戦闘的な恬淡というごとき日本的な『間柄』を家族的に実現しているにほかならぬ。そうしてまたこの間柄の特殊性がまさに『家』なるものを顕著に発達せしめる根拠ともなっているのである。なぜなら、しめやかな情愛というごときものは、人工的・抽象的な視点の下に人間を見ることを許さず、従って個人の自覚にもとづくところの、より大きい人間の共同態の形成には不適当だからである。そこで『家』なるものは日本においては共同態として特に重大な意義を帯びてくる。」さらに日本の神話に見られる宗教観を論じた後、次のような論考が続きます。「古代の教団的な国民の結合は、家のアナロギーによって解せられ得るような特殊性を持っているのである。それは激情的であってもしめやかな結合を含むのであり、戦闘的であっても恬淡に融合するのである。このような特性は、たとい烈しい争闘の中に対立していてもなお敵手を同胞として感ずるというごとき、きわめて人道的な人間の態度を可能にする。敵を徹底的に憎むということは日本的ではなかった。ここに我々は、日本人の道徳思想の産み出されて来る生きた地盤を見ることができる。」今回はここまでにします。