Yutaka Aihara.com相原裕ウェブギャラリー

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「現代の美学的凝結」について
「シュルレアリスムのために」(瀧口修造著 せりか書房)の「現代の美学的凝結」について気になった箇所をピックアップいたします。「超現実主義はまず、現代の詩と造型芸術とにもっとも新鮮な生命力を注入すると同時に、エスプリの解放に寄与せんことを望むものである。」本単元には、シュルレアリスムが取り上げているオブジェについての考察があり、そうした物体、とりわけレディメイド(既製品)に関する論考に、私は常に関心を寄せてきました。既製品を本来の用途ではなく、芸術作品として扱ったことは、芸術を学び始めた当時の私には驚きであり、自分が大学で人体塑造をやる意義さえ分からなくなっていたのでした。とは言え、その頃の自分の習作に対し、私は芸術的概念を持ち合わせていなかったので、視野を広げることを自制せざるを得ず、大学で学ぶことと社会で起こっていることが乖離している状況を受け入れていました。本書に戻ります。「もっとも注目すべきものとして、オブジェ(物体)の発見がある。この実験はダリの提唱した〈象徴的機能の物体〉に発したものであるが、既製品の物体の非合理的な再創造が、言語影像、絵画影像における場合と同じく、不可思議な凝結の幻影を形づくることを証明するのである。そしてひいては自然におけるオートマティスムの発見にまで到達する。〈捨得物あるいは発見されたオブジェ〉がそれである。こうした物体再発見の実験は、人間と対象との交通のための公有道路を見出したものであり、造型美術の領域にあっては、対象と材料の不当な極限、ジャンルの不当な防壁を打破するものである。ここでも、超現実主義は、表現芸術を、人間の内部欲望の総体において解釈するものであることを示している。オブジェと詩とを結合したブルトンの〈物体詩〉のようなこころみは芸術の仮象的境界に驚異的な通路を暗示したものである。オブジェの再認識は、彫刻の観念を革命しつつある。ピカソ、ジャコメッティ、アルプ、エルンストなどの彫刻は従来の彫刻の観念をまったく破棄したものというべきである。」今回はここまでにします。