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「カラヴァッジョ」を読み始める
「カラヴァッジョ」(宮下規久朗著 名古屋大学出版会)を今日から読み始めます。本書の副題は「聖性とヴィジョン」とあって、これが単なる伝記ではないことが分かります。バロック期のイタリアの画家カラヴァッジョは、私はどこかの展覧会で作品を見ていて、光陰の強い舞台を背景に描かれたドラマチックな情景に、思わず眼を留めた印象があります。その時はどんな画家なのか知識もなく、絵画の印象だけで通り過ぎてしまいましたが、彼が殺人を犯し、逃走したという、彼の生涯にあった刺激的な事件だけを焦点化して、私の中で独り歩きをしてしまったのでした。宗教画を描いているからといって、制作者である画家は聖人君子ではないという事実、感情の表出が表現にまで高まったとすれば、私の中で納得もできるのかなぁと思っています。様々な芸術家の生涯を見れば、何でもありな人も少なからずいるので、自殺もあれば他殺だってありうるだろうと物騒なことも考えるようになりました。それだけではなく、カラヴァッジョが生きた時代はどんな時代だったのか、彼は本当はどんな人物だったのか、エピソードばかりが取り上げられるので、ここでしっかり彼の画業を多角的に捉えてみたいと思っています。序文にこんな文章がありました。「本書は、カラヴァッジョに関する美術史的な研究をまとめたものである。カラヴァッジョを同時代の美術との関係でとらえ、その芸術の特質を考察していく。それに加え、いくつかの作品の様式ならびに主題を考察するが、それらは殺人後の逃亡期、つまり晩年の作品に重点を置いている。」カラヴァッジョ自身は事件の後に悔恨があったのでしょうか。それがどのように作品に反映しているのでしょうか。興味が尽きないところですが、じっくり読み込んでいきたいと思います。