Yutaka Aihara.com相原裕ウェブギャラリー

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「死からの覚醒」について
「カラヴァッジョ」(宮下規久朗著 名古屋大学出版会)の「第3章 回心の光」の中の「3 死からの覚醒」の気になった箇所を取り上げます。この単元ではカラヴァッジョの「ラザロの復活」を取り上げています。「メッシーナに移ったカラヴァッジョは、ジェノヴァの商人ジョヴァン・バッティスタ・デ・ラッザリの注文を受け、おそらくは1609年初めにクロチーフェリ修道会の主礼拝堂に設置する《ラザロの復活》を制作した。」前単元にもありましたが、カラヴァッジョの宗教画は、光を通して内面を描くことが多く、当時多く描かれた壮大な宗教画の中で、現実性を強く打ち出しているように感じています。「キリストの周囲には、ラザロを覗き込む人物のほかに、三人の男が驚いているように後ろを振り返っているが、その視線は不思議なことにキリストにではなく、画面の外に向けられている。彼らはキリストとともに入ってきた一条の光を驚愕して見つめているようだが、そこにはラザロを蘇生させた超越的な存在がいるのであろうか。あたかもラザロに息を吹き込んだのは、暗がりに屹立するキリストではなく、墓室に差しこんできた光であるかのようであり、人々には実はキリストが見えていないのではないかと思わせる。この画面では、キリストの存在は象徴的・暗示的なものにすぎず、光こそが奇蹟をもたらす存在となっているのである。~略~キリストは光を背に受け立っているが、その全身は陰となって目立たず、蘇生したラザロもキリストを見ていない。ラザロは神の声を聞き、それに感応して歓呼のポーズのように右手を上げて光を受け止めている。ここでもやはり、彼の内面の覚醒が光によって表現されているといってよいであろう。」今回はここまでにします。