2025.05.22
本日から「近代絵画史(下)」(高階秀爾著 中公新書)に移ります。その最初は「第13章 世紀末絵画」です。世紀末絵画について気になったところをピックアップしていきます。「もともと、80年代の中ごろに印象派のグループが解体した時、印象派の持っていた『外の世界への眼』に代わって、人間の内面の世界へ向けられた視点が登場してきたわけだが、ナビ派をはじめとする世紀末の画家たちは、その『内部の世界への眼』の持つ可能性を、さまざまなかたちで探求し続けたと言ってもよい。その意味で、フロイトの深層心理学を主要な武器として第一次大戦後に登場してくるシュルレアリスムも、その世紀末の幻想世界の系譜につながるものとも言える。そう言えば、フロイトの『夢の解釈』が世に問われるのは、ドニの《セザンヌ礼賛》が描かれたのとちょうど同じ1900年のことなのである。」ここで3人の画家を取り上げています。まず、ルドン。「ボルドーに生まれ、荒涼としたペイルルバードで少年時代を過ごしたルドンは、同時代のモネやルノワールと正反対に、いつの間にか自分の心のなかの暗闇の世界を自己にとってかけがえのないものと思うようになっていた。ポーやボードレールを愛好し、マラルメやヴェルアーランなどの象徴派の詩人たちと親しかったルドンは、生涯の前半においては主として木炭デッサンや石版画のような白黒の手段によって、晩年にはまるで夢のなかの虹のように華やかな輝きを見せる神秘的な色彩によって、造形的な夢の詩を歌い上げることができた。」次にムンク。「早くから相次いで肉親の不幸に見舞われ、病いや、死や、裏切りや、嫉妬など、人間の情念の暗い部分を見つめながら自己の魂を形成していったムンクは、とくに90年代には、《思春期》や《叫び》のような不気味な名作において、どこから来るともわからない人間の心の不安を、きわめて説得力に富んだイメージを用いて画面に定着するのに成功している。」最後にベックリン。「ギュスターヴ・モローとほぼ同じ世代の幻想画家アルノルト・ベックリン(1827-1901)がいる。哲学者ゲオルク・ジンメルによって『ミケランジェロ以来最大の画家』と絶賛されたベックリンは、いくつものヴァリエーションがある有名な《死の島》や《骸骨のいる自画像》に見られるように、細部の描写においてはきわめて入念な写実主義者でありながらーあるいはそれゆえにー画面全体としてはまったく非現実的な幻想性を漂わせる画面を多く残し、後のデ・キリコやシュルレアリスムの画家たちに大きな影響を与えた。」今回はここまでにします。