2026.03.25
「ピクチャレスクとイギリス近代」(今村隆男著 音羽書房鶴見書店)の「第3章 ピクチャレスクと庭園」の「5ピクチャレスク理論の完成(2)」を取り上げます。本単元はプライスの「ピクチャレスク論」が中心になります。「初版の『序文』においてプライスは、『ピクチャレスク論』はナイトの『風景:教訓詩』に触発されて出版されるものであること、ナイトと自分の考えには若干の相違 があるがその主張はほぼ同じであり、二人の著作は相互補完的な関係にあることを述べ、共通する敵、即ち本論の中で何度も攻撃の対象となるブラウンとその後継者達に対してナイトと共闘することを宣言する。~略~ピクチャレスクの主たる特質は『粗さ』と、突然の変化、それらと結びついた『不規則性』であり、その一つ一つの対象の形態、色調、光と影の効果、配置の錯綜、そしてそれら相互の『結びつき』が重要である。これらの点に配慮できるのが『画家』であり、それがゆえに『画家の目』が重要な指針となる。~略~森林伐採や植林といった森林環境をめぐる諸問題、特に外来種の植林や高地植林への批判、そして古木の保護などにプライスは関心を持っていたが、その他にも『ピクチャレスク論』には現代の環境観にとって重要であると考えられる点が少なくない。彼が徹底して反対したのはブラウンによる広大な風景庭園の造園だったが、その土地『改良』は囲い込みに支えられており、いわば近現代の大規模開発の初期の例であったと言える。プライスは、その開発の中で消えゆく村落やそこでの伝統的な地域住民の生活を守るように訴えている。また、村の周囲を流れる魚の泳ぐ河川を自然状態に維持することなども彼は問題にしていた。~略~産業革命の進展の中で19世紀に入るとプライスが守ろうとした伝統的な農村の社会構造の秩序は徐々に変化、衰微していった。その中で、プライスに対する評価も変わっていったと思われる。~略~ワーズワスが理想として掲げているのは領主のいない均質で平等な関係の中で住民が自然と共生しながら生きる調和した地域共同体であり、プライスが考えている、領主から領民への『慈愛』が絆となった階級的に調和した共同体との違いは明らかである。」今回はここまでにします。