2024.11.11
「抽象芸術」(マルセル・ブリヨン著 瀧口修造・大岡信・東野芳明 訳 紀伊國屋書店)の「Ⅴ 抽象絵画の主流 」の文中に出てくる多くの芸術家を今回も3人取り上げます。「(ジャン)デイロールがはじめてキュビスムと袂を分ったとき、それは対象との完全な決別を意味したが、またそのためにモンドリアンの幾何学主義に復帰せずに、具象的な関係そのものを洗い落した形態を使って再構成するという必然性を意味していた。この画家がつくりあげた新しい形態は、柔軟であると同時に峻厳なものでなければならなかった。そして、この柔軟と峻厳の交錯こそ、また繊細さと感受性にもモニュメンタルな方向にもつながるこのたしかな力そのもののためにこそ、われわれがデイロールの芸術を愛するのである。」次にニコルスン。「30年来、かれ(ベン・ニコルスン)の絵画そのものは、形態の領域においても、色彩の領域においても、隔絶と剥奪に向かおうと努めている。そこにみられるのは、モンドリアンのそれに比すべき禁欲主義だ。規制された幾何学的な形態はますます単純になり、ますますひかえ目な関係で連結され、パレットの上の色調は希薄になって、華麗な色彩のかわりに、微妙な繊細さの白と灰色が現われてくる。これは一面、ウィッスラーとのひそかな親近性を思わせる。事実、その影響はかれの幼年時代にあった。というのは、かれの父がこの画家流の描き方をしていたからである。」最後にヴァザルリー。「(ヴィクトル)ヴァザルリーは、空間的な問題に没頭して、開かれた形態の方向に探究をつづける。これはいうまでもなく、透視法の形態とはなんら関係がないもので、単にまず距離の錯覚を起こさせないタブローの飾りに三次元を利用する、もっと賢いやり方である。そこに、もとの二次元性に一応準じて平面を排列することで、多種多様な空間の一種の投影が生ずる。したがって、ヴァザルリーの最近の仕事の傾向は、錯覚的な空間の介入をつねにさけるために、現実の空間を組み入れることにある。」今回はここまでにします。