2024.12.19
「世紀末芸術」(高階秀爾著 筑摩書房)の第三章「世紀末芸術の特質」の初めに「華麗な饗宴」の単元があり、これについて気に留めた箇所をピックアップしていきます。「世紀末芸術がその幅広い活動分野において、まず目指したのは、この『外界再現としての芸術』という考え方の打破であり、そのための手段として選んだのは、『装飾性の復活』ということであった。~略~装飾に対する関心が最も早くあらわれたのは、ラスキン、モリスを先輩にいただくイギリスの世紀末芸術家たちにおいてであった。それは、人間の生活環境を美しいものにし、それによって美に対する洗練された感受性を養おうとするもので、室内装飾、家具、食器、文房具、本の装丁、印刷、レタリング等、直接生活と結びついたあらゆる分野において、華々しく展開された。~略~イギリス、フランスから、さらに眼を転じてゲルマン系諸国や北欧の国ぐにを見ても、事情はほぼ同じであった。当時の『ヨーロッパ的画家』としては、ノルウェーのムンク、スイスのホドラー、オーストリアのクリムト等がその代表的な存在として挙げられるが、いずれの場合においても、画面の装飾化の意図は(それがすべてではないとしても)きわめて明確である。」やがて建築にもその影響が出てきます。「装飾表現は、最初のうちこそ、建物の本体にあまり関係のない細部に発達するかと思われたがやがてそれは建物の全面を覆い、内部に入りこみ、設計プランにまで影響を及ぼすようになる。」それには反発もありました。「つまり逆に言えば、アール・ヌーヴォー様式が、後に『世紀末的悪趣味』として激しい悪評を買うようになったのも、それが単に装飾だけの問題ではなく、建築そのものの内容にかかわる問題であったればこそであり、むしろ装飾は、新しい建築表現のための口実となるものであった。」さらに広告分野にも影響が出てきました。「決定的に世紀末絵画の平面化に影響を与えたのは、ポスターである。ポスターと言えば、われわれはただちに、あのトゥールーズ=ロートレックのムーラン・ルージュのポスターを思い浮かべるが、ロートレックやボナールのような一流の画家たちの手になるものをも含めて、19世紀最後の十年間は、かつてないポスターの隆盛を見た。」今回はここまでにします。