2025.10.29
「廃墟論」(クリストファー・ウッドワード著 森夏樹訳 青土社)の11番目の章は「小説家、漁師、そして公爵」という題がついています。本書はこれが最後の章になります。本章では3人の作家が登場します。まず、ローズ・マコーレー。「ローズ・マコーレー(1881-1958。イギリスの小説家・詩人)の小説『世界・私の荒野』の中では、ロンドンのシティが廃墟とされている。~略~マコーレーは『世界・私の荒野』を書く準備のために、ロンドンのシティにいき、瓦礫の中を探険し調査する人となった。このときのことをペネロピ・フィッツジェラルドが記憶している。それは『驚くべき経験』だった。フィッツジェラルドはマコーレーのあとをはうようにしてついていく。『そしてマコーレーの痩せぎすのうしろ姿を見つめていた。マコーレーは臆することなく、爆弾によってできた穴の中へと下りていく。また背をかがめては、こちらに手で合図を送りながら、ガラスが砕け散った危険な窓の中へ体を滑り込ませる』。」次にジョン・ハリス。「廃墟の旅ということになると、現代でもっとも重要な意味をもつ旅をしたのはジョン・ハリスだろう。それはハリスが第二次世界大戦後、数年をかけておこなった田舎屋敷の調査・探険の旅である。今日ハリスは、イギリスのどの建築史家に比べても、はるかにアカデミックな論文(テーマは『歴史上名高い田舎屋敷について』)を書いたり、はるかに多くの展示会を主催したりしている。その彼にイギリスの風景の案内を頼んでみると、あたかもイギリスの空中写真を目のあたりにするような感じになる。表面下に隠れていた模様がたちどころに現われてくる。」最後にジュゼッペ・トマージ・ディ・ランぺドゥーサ。「パレルモにあったランぺドゥーサの宮殿は瓦礫のままにされていた。そして都市の中心部では、残骸の間に、崩れずになお残っていた多くの宮殿が、中世に見られたローマの廃墟によく似た風景を作り出していた。~略~彼の小説では、ふたつの宮殿がひとつに溶け合って『ドンナフガータ』となって登場する。この場所でタンクレディ(タンクレディ・ファルコネリ。サリーナの甥)と非常に美しいアンジェリカ(村長の娘。タンクレディと結婚する)が出会うわけだが、1966年に制作されたルキノ・ヴィスコンティ監督の映画『山猫』では、ふたりの役をアラン・ドロンとクラウディア・カルディナーレが演じていた。」今回はここまでにします。