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「アンドレ・ブルトン伝」紐解く
今年、東京国立新美術館で開催された「シュルレアリスム展」を契機に、フランスの詩人で美術評論に関しては桁外れの著述家でもあったアンドレ・ブルトンについて改めてその思想の片鱗に触れました。改めて、というのは自分の学生時代にブルトンの著作を齧ったものの到底歯が立たず、途中で断念した思いがあるのです。あれから30年が経ち、再びブルトンに立ち向かい、この間に国内外で身につけた僅かばかりの知識を活用して、ようやくブルトンの詩的言語で網羅された構築性のある論理を少しずつ紐解ける幸福に至ったように思えます。「魔術的芸術」や「シュルレアリスムと絵画」等々を読んでいると、当時の芸術家は個人的な思索を繰り返し、お互いが噛み合わない状況の中で、ブルトンが提唱した道筋によって統括され、またブルトン流の教義を与えられたように感じます。そこで、ブルトン自身の生い立ちや経歴の上で培われていった個人思想史や行動史が、アンリ・ベアールによって語られる「アンドレ・ブルトン伝」(思潮社)を読むことにしました。ブルトンとはどんな人物だったのか、彼が登場したことによって知的世界観がどのように変容していったのか、また現実世界ではどうであったのか、自分なりに考えたいことは山ほどあります。短い通勤時間で、いつもどおり時間をかけて読んでいくつもりです。