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「難波田史男の15年」展
一昨日、東京オペラシティギャラリーで開催中の「難波田史男の15年」展に行って来ました。現代絵画で大きな世界を切り開いた難波田龍起は史男の父にあたります。難波田龍起の絵画は前に何回か見たことがあり、その形象の無くなった茫洋とした世界観に魅かれていました。難波田龍起の次男にあたる難波田史男のまとまった作品を見るのは今回が初めてでした。一言で言えば自己の内面を捉える苦しさに満ちた世界が広がり、そこから紡ぎだされる線描や色彩が才気をもって自分に迫ってくる感覚を持ちました。一見P・クレーのようでいて、でもその線描は難波田史男独特のもので、他の追従を許さないほど奥深い世界があると感じました。心の在り処を軽いタッチで表現し、思惟を重ねつつ次から次へと生み出していく作品群は、短い生涯を予見しているようでした。自分が単純に美しいを思った作品は「不詳(10点組)」と「無題(4点組)」です。グラフィックな要素もあって、その構成に眼が奪われました。心理的な描写では、それに続く小品が秀逸で、しかも多作なのに驚きました。享年32歳。普通ならまだ画学生といってもおかしくない年齢です。お恥ずかしいながらこの歳に自分には発表できる作品がありませんでした。夭折な作家は誰でも初めから作品に深い精神性を湛えています。非凡な才気が漂うのです。自分のような凡人は長く制作を続けて、ひとつのものだけを構築するしか方法がないと思えます。