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「色彩の詩人アウグスト・マッケ」読後感
「色彩の詩人アウグスト・マッケ」(佐藤洋子著 中央公論事業出版)を読み終えました。ドイツ表現主義の画家としては最も若くして世を去った画家です。27歳の戦死は衝撃的です。同じ「青騎士」で活躍した画家フランツ・マルケによる哀悼の辞を引用します。「幾多の勇者のなかでも一発の弾丸が一人のかけがえのない人間に命中した。かれの死をもって一つの民族の文化は、その手を切断され、その眼は盲にされた。この残酷な戦争は、どれほど多くの恐ろしい毀損をわれわれの未来の文化にもたらすことだろうか。~略~かれとともに仕事をしたわれわれ、かれの友人たち、われわれは知っていた、この天賦の才ある人間が、どれほど密かな未来を自らのうちに持っていたかを。~以下略~」マルケはマッケのあまりにも早すぎた死を悼み、未来への期待が失なわれたことを嘆いています。また、筆者の言葉を引用すると「制作約十年の夭折のため、その作品世界は、これまで『未完の画家』、『若きマッケ』という評価がなされてきた。人生は断絶されたが、作品は未熟ではない。不条理を超えた訴求力をもって、一世紀を貫いて放ち続ける輝きをもって、作品は今日に受け継がれている。」という言葉で、若くして完成したマッケの作品を讃えています。たかだか十年の制作で遺された作品が現代まで伝えられている事実を考えると、アウグスト・マッケは確かに天賦の才に恵まれた画家であったと私も思います。