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「ゲーテ美術論集成」読後感
「ゲーテ美術論集成」(J・W・フォン・ゲーテ著 高木昌史編訳 青土社)を読み終えました。北方絵画・建築・彫刻・版画のゲーテによる美術論がコンパクトにまとめられていて、概観を把握するのに好都合でした。最後の解説にあった箇所を抜粋します。「18世紀後半から19世紀初めにかけては、美術批評がいまだ生成過程にあり、特に古い時代の作品に関しては十分な情報もない有様」で、「原画に接する機会は、交通機関の発達した今日からは想像も出来ないほど少なかった。」とあります。確かにそうした状況を踏まえると、本書に記されているゲーテの諸論は、その内容からして詩聖の力が遺憾なく発揮されたものだと言えます。現代だからこそゲーテの視点や思索を理解できますが、18世紀当時からすれば作品そのものから洞察する先見性や解釈力は凄いものがあります。本書は「ゲーテと歩くイタリア美術紀行」の姉妹編として著されたものなので、その前著となった「ゲーテと歩くイタリア美術紀行」も読んでみたいと思いました。最後にゲーテの言葉を引用します。「絵画は眼にとって現実そのものよりも真実である。それは、人間が普通に見ているものではなく、人間が見たいと思うもの、見るべきものを提示する。」