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「瀧口修造 白と黒の断想」読後感
「瀧口修造 白と黒の断想」(瀧口修造著 幻戯書房)を読み終えました。故瀧口修造は詩人ですが、シュルレアリスムを日本に紹介した美術評論家としても知られています。シュルレアリスム提唱者ブルトンや画家ミロ等とも交流があり、また写真にも関心を寄せた人でもありました。本書は写真作品が中心の評論集です。近代になって急速に発展した写真。造形美術を含めて写真表現との関わりを論じ、ジャンルの分化に対し一石を投じる理論を展開しています。文中のコトバを引用すれば「写真が、まず光と感光剤を媒材とする表現であるという、根本的な条件にたち返って考えてみることも必要です。どれほどメカニズムが発達し、どれほどその表現技術が進歩しても、もっとも基本的な、または原始的な写真の条件というものを忘れてはならないでしょう。」という写真の原点を論じた後、「写真のメカニズムと化学のなかには、カメラによって撮影する記録以外にも、ゆたかな表現の手段が潜んでいるのであって、それらはすべて人間の表現欲のために生かされなければなりません。」という結論に到達しています。本書には近現代彫刻について触れている箇所もあって、自分の興味関心をそそられる部分も多くありました。