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「悲劇の誕生」を読み始める
「悲劇の誕生」(ニーチェ著 秋山英夫訳 岩波書店)を読み始めました。哲学者フリードリッヒ・ニーチェは1844年にライプティヒ近郊の村に生まれました。当時はドイツという国ではなくプロイセン王国でした。大学で古典文献学を修めたニーチェは、若くしてバーゼル大学の教授に迎えられますが、24歳で上梓した「悲劇の誕生」が波紋を呼びます。これは古典文献手法を用いず、主観的で学問としての厳密さを欠いているとして当時は散々酷評されたようです。これを読み始めて思ったことは「悲劇の誕生」を書く契機となったショーペンハウワーによる「意志と表象としての世界」をまず読まなければならないと感じたことです。「悲劇の誕生」は、たとえばボイスだったりシュペングラーだったり、他書からの引用があって読み始めましたが、この世界にどんどん深入りしてしまいそうな自分を発見し、ニーチェが「生の無垢」を求めるために「永遠回帰」の思想に到達する過程に、とことん自分は付き合ってしまうかもしれないと感じてしまいました。ニーチェと音楽家リヒャルト・ワーグナーの親密な関係はよく知られていますが、ワーグナーがバイロイト祝祭劇場を立ち上げ、「ニーベルングの指環」を上演すると、ニーチェはそのワーグナーを取り巻くブルジョア社会の卑俗さに失望し、上演途中で退席したようです。その後、ワーグナーと袂を分かつようになります。そんなニーチェが55年の生涯を賭け、常に更新し続けた思想に浸れば浸るほど、哲学的思惟に強からぬ自分は翻弄されるだろうことはよくわかっています。それでもニーチェに暫し付き合おうと決めました。今回の通勤の友は若干手強いかなぁと思っています。