Yutaka Aihara.com相原裕ウェブギャラリー

note

三連休 美術館&劇場へ
三連休最終日は、台風19号が迫る中、東京国立新美術館とKAAT(神奈川芸術劇場)に出かけました。彫刻家池田宗弘先生から自由美術展の招待状をいただいたので、朝一番に美術館に飛び込みました。池田先生の作品は野外に展示されていました。真鍮直付けによる「ネコ 椅子の上で」と題された作品で、椅子の上にいる猫は振向き、背もたれの上にいるカタツムリをじっと見つめる情景を作ったものです。池田先生の得意とする猫の表現で、猫も椅子もカタツムリも全て真鍮です。今でも思い出すのは、自分が彫刻を学ぼうとした時、池田先生の猫の群像が眼の前にありました。皿に置かれた骨だけになった魚を狙う痩せこけた猫たち。情景の緊張感も然ることながら、骨格だけになった飢えた猫の群像表現、それは量感がなく腹に穴が開いている凄まじい猫たちでした。ただし、その穴だらけな猫たちに限りなく大きな空間を感じ、ジャコメッティにも似た乾いた空虚を見て取りました。この人に教えを請おうと決めた瞬間でした。あれから30年以上も経って、今も池田先生にお世話になっています。その後、池田先生はキリスト教彫刻の第一人者になり、日常風景から聖書の物語へテーマが移りましたが、今回の出品作品は言わば原点回帰のようなものでした。昔に比べると肉付けが安定し、その分空虚な危うさが消えたように思えました。彫刻らしい彫刻がいいのか、欠損した不安定に存在を問うのがいいのか、果たしてどうなのか自分にはわかりません。午後はジャコメッティをテーマにした演劇を観にKAAT(神奈川芸術劇場)へ行きました。「わが父、ジャコメッティ」という比較的小さな空間で演じられた芝居で、現実と演劇の敷居を行ったり来たりする実験的な試みがありました。これは面白い試みで、演出上で呆けたことにした父親の面倒を見る息子が図式としてありましたが、一緒に芝居を観ていた家内の胸を打つものがあったようです。家内は看護住宅にいる私の母と接することが多いので、演劇内容を重ねてしまったのでした。この芝居はまだまだ要素が詰まっているので、詳しい感想は後日にしたいと思います。